江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫) 文庫 – 2005/1/12
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魚津へ蜃気楼を観に行った帰りの汽車の中、二等車内には「私」ともう一人、古臭い紳士の格好をした60歳とも40歳ともつかぬ男しかいなかった。
あらすじ
魚津へ蜃気楼を観に行った帰りの汽車の中、二等車内には「私」ともう一人、古臭い紳士の格好をした60歳とも40歳ともつかぬ男しかいなかった。「私」はその男が、車窓に絵の額縁のようなものを立てかけているのを奇異な目で見ていた。夕暮れが迫ると、男はそれを風呂敷に包んで片付けた。目が合った。すると男のほうから「私」に近付いてきて、風呂敷の中身を見せてくれる。それは洋装の老人と振袖を着た美少女の押絵細工だった。背景の絵に比べその押絵のふたりが生きているようなので驚いてる「私」に「あなたなら分かってもらえそうだ」と男はさらに双眼鏡でそれを覗かせる。いよいよ生きているみたいに思えた押絵細工のふたりの「身の上話」を男は語り始める。
書籍情報
江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)
江戸川 乱歩 (著)文庫: 672ページ
出版社: 光文社 (2005/1/12)
ISBN-10: 4334738206
ISBN-13: 978-4334738204
発売日: 2005/1/12
商品パッケージの寸法: 15.2 x 10.6 x 2.2 cm
あらすじ
何をやって見ても、一向この世が面白くない。そんな男が発見した最後の楽しみ。それは屋根裏を歩きまわり、他人に見せない醜態をのぞき見ることだった。淫靡な快楽の虜となった男が、ついには完全犯罪を目論むが!? 表題作の他、「二銭銅貨」「D坂の殺人事件」「人間椅子」など最初期の傑作群を収録。
ISBN-10: 4334737161
あらすじ
収録作品 闇に蠢く 湖畔亭事件 空気男 パノラマ島綺譚 一寸法師
自作解説 解題 注釈 解説 長編作家乱歩の誕生/新保博久
私と乱歩 大林宣彦
無限の怪しき夢/大林宣彦(映画作家)
乱歩は荒唐無稽のようだが、そんな事は無い。まことに油断のならない「観察眼」で人間を見詰め、それを我が「想像力」の中で無限の怪しき夢に繰り広げて行く。(巻末エッセイより)
ISBN-10: 4334737331
あらすじ
ISBN-10: 4334739792
あらすじ
大正時代の終わりから昭和前半に一世を風靡したミステリー作家・江戸川乱歩。おどろおどろしく奇怪な筋立て、幻惑的な場面展開、妖しい人物、名探偵・明智小五郎による快刀乱麻の謎解きなど、短編長編のいずれも魅力にあふれいまだ人気衰えることがない。この乱歩の全集30巻が新たに文庫版で刊行され始めた。初回配本『孤島の鬼』には同名作品と『猟奇の果』の2長編が収録されている。
『孤島の鬼』の主人公「私」は美貌の青年。彼を愛する年上の青年の悲哀と、彼が愛した娘の殺人から物語は始まる。そして「私」が巻き込まれる悲劇とおぞましい体験は、短期間で彼の頭髪を真っ白にさせるほどのものだった。同性愛と異形なる者の陰翳に隈取られつつ、血塗られた殺しがそこに重なった、濃密で粘度の高い<語り物>である。
『孤島の鬼』と『猟奇の果』は昭和4年から1年に1作のペースで間断なく雑誌連載され、整形外科手術による「人間改造術」をその共通プロットに持つ。しかし完成度において『孤島の鬼』にはっきりと軍配が上がる。『猟奇の果』は途中でストーリーの破綻をきたし、後半で明智小五郎を登場させるが、姑息な急場凌ぎも上手くいかなった。才能豊かな乱歩にしてさえ起こった失敗だが、それをこそおもしろさとして受け止めることもできよう。
装幀のカバーに使われた勝本みつるのオブジェ・コラージェが妖しさを演出。見返しには初版本の写真もカラー掲載されている。(松平盟子)
ISBN-10: 4334735282